せっかくインドネシアに住むことになって……
何かインドネシアを感じられるものをもっと楽しみたいなー……
今回はそんなあなたにぴったりなインドネシアをもっと楽しめる小説!
インドネシアを舞台にした日本人作家による作品や
インドネシア人作家の書いた小説で、日本語に邦訳されているもの
からおすすめの10冊について書きました。
1位 神鷲商人
1960年代、戦後の日本とインドネシアの復興において、当時の商社マンを主人公にした、お金、政治、女性、国際関係、内戦、、数多くの事実をベースにした小説です。
2023年現在の日本とインドネシアの関係、 デヴィ夫人、現在のインドネシア、ジャカルタ、、
そんなところを鑑みながら読むとより面白いです。物語の随所に、現在のスディルマン通りが建設される前の話なども出てきたり、当時の大統領官邸の様子が出てきたりと現在の姿と比較すると感慨深いと感じられるシーンが登場します。
題名の商人とはデヴィ夫人のことか?
太平洋戦争後のインドネシアを舞台に日本の商社などが海外支援を名目に金儲け事業にのめり込んでいく。
と、同時に根本 七保子のちにスカルノ大統領の第三夫人になるデヴィスカルノ夫人の物語でもある。
創作作品だからどこまでが事実に近いかは不明だが、かなりの部分は事実に基づいているだろう。
昨今テレビでは人気者のデヴィ夫人だが、当時のことを考えれば過酷な人生だったと推察される。
興味ある作品でデヴィ夫人を知るにはもってこいの作品だろう。
2位 利権聖域 ロロ・ジョングランの歌声
登場人物は、”記者”と”ボランティア活動の従事者”、”国際開発コンサルタント”、その点からも度々メッセージとして、“ボランティア”や”援助”というのは一つのキーワードになってきます。
個性豊かな登場人物によって、とある記者からは、ボランティア活動に向けられる、”偽善だろう”や”実際に日本政府からのODA(政府開発援助)のお金は有効に使われていないのではないか?汚職金のような形で中抜きをされているのではないか?”といったリアルな鋭い批判的声や視線を表現しています。
一方で、ボランティア従事者の登場人物からは、ボランティア活動の重要性、あるいは、ボランティア活動のリアルな現実、マスコミとの対立など、現実を基にしたメッセージも伝えられています。
日本が世界に誇れことの一つが世界中に供しているODA額の多さであると思うが、ODAや国際援助の真実の部分に深く迫っている本なのではないかと思う。
今だに多くの新興国では賄賂などの腐敗政治が横行しており、取り締まり切れていないというような記事を目にするが、冷戦時代の開発独裁がはびこっていた時代では、今とは比べ物にならないくらい腐敗政治が当たり前だったろうし、大国としても正義のもとではなく、己の利益のためにそれらを利用していたのだろうと思う。それがある意味時代の要請であったし、当時としては最善であったのかなとも思われる。
一方で、不正や偽善が正義であったという時代を映し出すことで、本当の正義とは何か、という根源的かつ大きな問題を本書は提示しているとも感じられる。
昨年の暮れくらいから多くの新興国で政情不安が起こっており、世界を揺るがしているが、本書はそういった動きにも相通じるものだと思う。
政府開発援助等にまつわるおカネの”利権”を得るための触れられない”聖域”の意義について問題提起をしている小説だと思います。
本当にこの”利権”の”聖域”を守る行いをする必要があるのか?
それを続けているとどうなるのか?
この問いを1人1人欠かすことのできない登場人物を通して、恋愛、結婚、人生そのものを絡めながら訴えかけてくる、伏線回収が見事な小説です。
インドネシア在住やインドネシアに興味がある方には、絶対にのめり込んでしまう一冊になると思います。
3位 鯨人(くじらびと)
生きるために人と鯨は闘う!そんな人々を約20年にもわたる取材を重ねて書かれた本。
世界最大の生物に挑む誇り高き鯨人達の姿と、村の営みに深く根ざす捕鯨文化の詳細を記録し、ついには捕鯨の水中撮影を敢行する。
やはりいちばんの驚きは、エンジンもついていない手漕ぎの木製のボートで、銛一本でくじらを仕留める手法。
くじらに銛を刺したとしても、長いときは一日以上引き回されたりすることもあります。
そして、このドキュメンタリーのもう一つの面白い側面は、1991年より現在にいたるまで、19年以上をかけた取材を通して、その人々の世界をどのように変えていったか?
クレイジージャーニーを見て、石川梵の鯨人を購入しました。とても良いドキュメンタリー作品です。
銛突きの様子は、現地で実際に漁を体験してことがないと表現できないものだと感じました。
写真はほとんどありませんが、鯨に接近した息を呑む瞬間のものがあり、どれも秀作だと思います。
鯨漁、信仰、祈り、日々の生活、長らく現地に滞在し、漁に同行していないと感じ取れない心が表現されていると思います。
4位 人間の大地
『人間の大地』は、1969年から10年間流刑地ブル島に勾留され、表現手段を奪われたプラムディヤが、同房の政治犯にそのストーリを日夜語って聞かせたという、途方もないスケールの4部策の第1部です。
舞台は1898年から1918年にかけてのオランダ領東インドで、インドネシア民族が覚醒し、自己を確立していく長い闘いを描いた、これはいわばインドネシア近代史再構成の物語といえます。
この本が特に面白いと感じたのは、オランダ領時代のインドネシアにおける原住民(ジャワ人)とオランダ人、あるいは中国人などの様々な異人種、異文化が交わった世界を半フィクションの形式で原住民の目線で語られていることです。
そこには、やはり、政治的な狙いを持った出来事や難しさを抱える純愛、家族内での人間関係。
100年前の史実を題材にしたとはいえ、現代に生きる私にも情景や感情が容易に想像され共感を生むシーンも数多く展開されます。
今からたかだか100年ほど前、インドネシアがオランダ領だった時代の物語。
最初は何の物語だかよく分からなかったが、読む進むうちにごく自然に、植民地で生まれ生きることの理不尽さが心に染み込んでくる。
そういうことを、若い青年の目線で淡々と描いている。
最高の教養を身に着け、資産を築き上げようとも、下等で無教養で人間以下としか見なされない。
主人公の青年も、先生からつけられたニックネームが屈辱的な意味なのでは、と何年も経ってから気づく。
この上巻で「裁判」というキーワードが出てくるので、きっと下巻は主人公が裁判で闘う展開になるのだろう。
翻って我が国、日本。
明治維新以後、短期間で欧米列強に劣らない国力を備え、欧米にならって植民地を持とうとした。
同じアジア人が宗主国になってしまったばかりに、歴史問題が今になってこんなにこじれるのではないかと思えてくる。
今、インド人が巨大IT企業のCEOになり、アジア諸国の方が列強という言葉に相応しい存在となり、反対に欧米諸国が落日の如く自壊していく。
世界史は現在ヨーロッパ中心主義だが、あと100年くらいしたらアジア中心になり、「かつて欧米は栄えた時代があった」と記されるかも知れない。
日本はどちら側として書かれるだろうか。
日本の首相がアジア外交に注力するのは大切なことだと思うが、ゆめゆめ、上から目線にならないようにと、願うばかりである。
5位 珈琲の哲学
インドネシア現代文学を代表する女性作家ディー・レスタリの短編集、本邦初の全訳!
表題作「珈琲の哲学」をはじめ、さまざまな形の愛を追い求める人たちの痛みと迷いと癒しを鮮やかに描き出す珠玉の18篇を収録。
この小説が面白いのは、コーヒーと人生を照らしあわせるような描写、あるいは情景が浮かぶところ。
“完璧な” “珈琲”とは何だろうか?というコーヒーをテーマにした小説は、読むにつれて、読者をいつの間にか、“完璧な人生とは何だろうか?”という大きな命題のストーリーにいざなう。
シュールなベストセラー作家
この短編集は、フランス小説のようなシュールな話が詰まっている。翻訳がとても自然なので、すっと読めるが、内容は濃い。登場人物は個性的な人ばかり。心の内面を表現する作者の表現力は豊かで、現実のようなファンタジーの世界へと誘ってくれる。
個人的には表題作「珈琲の哲学」よりも「ヘルマンを探して」「一切れのパウンドケーキ」がよかった。
こういう小説を味わうには、澄んだ心がなければならないような気がする。幽霊や迷信を信じやすいインドネシアの人々。私もインドネシアに住んで1年、ようやく、こういうシュールな小説を味わう、澄んだ心のインドネシア人たちの心の中がわかってきたような気がする。
物語へ引き込む表現力の素晴らしさ
恋愛における人の心の憂いや葛藤が、さまざまなストーリーや人物で描かれた短編集です。
何気ない日常を切り取ったような場面が物語になって共感しやすいうえ、情景と心理の細やかな描写と表現力にぐいぐいと引き込まれていきます。また間に挟まれる短い散文は歌の歌詞のようで、一つの物語を読み終えたあとふと心に入ってきます。原書は読んでいませんが、作者の表現力だけでなく、翻訳者の丁寧な言葉選びによってこの本が完成している、と感じます。
特に印象的だったものを。
「ヘルマンを探して」はミステリー小説のよう。スピード感のある展開と結末から冒頭へのつながりに唸らされます。
切ない恋を描いた「チョロのリコ」は、描写に圧倒されながらも続きが気になり最後まで読み切りました。ラブストーリーでもあり、人によってはホラーでもあり、でもそんな情景がコメディにも映ります。ちょっと日本では見られない類かもしれません(笑)ぜひ読んで実感していただきたいです。
6位 虹の少年たち
あまり小説が読まれないインドネシアで500万人以上に読まれたと言われ、
17カ国語に翻訳され、映画化もされた実話に基づいた小説。
1980年代この島では、衣食住もままならない生活をしている人たちの小さな島で、新入生が10人集まらなければ廃校すると決めていた。
そんな10人が起こす奇跡とも思える数々の出来事。
例えば、、
1. クイズのテレビ番組で周りの学生にほとんど回答をさせずに優勝。
2. 島の文化祭で、私立の金持ち学校に勝って、優勝。
3. 奨学金を獲得してのアメリカ留学。
ほんとに奇跡のような出来事を引き起こした彼ら。1980年代のインドネシアでの事と考えるとそれがどれほどすごいことか在住者の私にはよくわかります。2023年の今ですら、家柄が貧しい家系に生まれた子どもたちが、アメリカに留学するなど、なかなか現実的な話ではありません。
サンマーク出版の「レインボープロジェクト」で邦訳された書籍です。全国の書店員さんに気に入ってもらわなければ発刊することができなかったと聞きましたが、この物語は本当に感動を呼ぶと思います!
どんなに貧しくても、学ぶことこそが未来をつくると思いますし、先に生まれたものは、必ず後に続く子どもたちに未来を授けなければならないということをこの本を通じて感じることができると思います。
たくさんの方に読んでいただきたい本です!
7位 赤道星降る夜
真実から生まれた、命の重さを問う人間賛歌。
ブラック企業に追い詰められ多額の借金を背負った達希(27歳)は発作的に飛び降り自殺を図り、15年前に死んだ祖父の霊に助けられる。
この本が特に面白いと感じたのは、戦争時に大多数を占めた一般兵士の視点での、当時の戦争の様子や状況、心情が鮮明に描写されている箇所です。
戦争ものの小説とはいえ、現代社会の20代目線を通して進んでいく物語は、とても読みやすく、ついつい入り込んでしまう展開で、ぜひみなさんにもおすすめしたい一冊です。
歴史の授業では習わなかった戦地で起こったこと。丁寧な取材によるエピソードは、読むことに痛みを伴うけれど、それに対する作者のフォローが細やかです。
『十六夜荘ノート』を読んだ方は、十六夜荘の登場人物のその後を知ることもできます。
文庫化でタイトルが変わっていますが、『痛みの道標』の装丁とタイトルの方が合っている気がします。
8位 帰らなかった日本兵 インドネシア残留元日本兵の記録
この本の最大の魅力は、実際の残留兵一人ひとりに実際に取材をして生の声を収めていることです。
“なぜ、インドネシアに残ったのか?”
この問いから展開される、一人ひとりの状況がとても興味深いです。
当時、終戦から日本に帰ったとしても、”戦犯者として扱われる”や”処罰をくだされる”など、インドネシアにいた日本兵には多くの噂がありました。
日本が大東亜戦争に負け、東南アジアからの撤退に際しての真実。戦後の教育においての真実等々、考えなければならない事がある事を再認識できました。
大東亜戦争敗戦後、東南アジアの国々の独立にの為に脱走兵となり、祖国の両親に申し訳ないと思いながら、インド、マレーシアなどの外国からの独立の為、命をかけて戦った人達がいたことを我々日本人が忘れていた。
最後に
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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