インドネシアで500万部超えの大ヒット小説 “Laskar Pelangi” (邦題: 虹の少年たち)
個人的書評
あまり小説が読まれないインドネシアで500万人以上に読まれたと言われ、
17カ国語に翻訳され、映画化もされた実話に基づいた小説。
最大限受け取る人ではなく、最大限与える人になりなさい
この小説の中で何度となく出てくるメッセージです。
舞台は、インドネシア ブリトゥン島(Pelau Belitung)。
1980年代この島では、衣食住もままならない生活をしている人たちの小さな島で、新入生が10人集まらなければ廃校すると決めていた。
そんな学校に奇跡的にちょうど集まった10人の子供たち。
そんな10人が起こす奇跡とも思える数々の出来事。
例えば、、
1. クイズのテレビ番組で周りの学生にほとんど回答をさせずに優勝。
2. 島の文化祭で、私立の金持ち学校に勝って、優勝。
3. 奨学金を獲得してのアメリカ留学。
ほんとに奇跡のような出来事を引き起こした彼ら。1980年代のインドネシアでの事と考えるとそれがどれほどすごいことか在住者の私にはよくわかります。2023年の今ですら、家柄が貧しい家系に生まれた子どもたちが、アメリカに留学するなど、なかなか現実的な話ではありません。
なかでも、最も優秀だったリンタンという少年は、舗装されていない40キロの未知を毎日、ぼろぼろの自転車で往復して通っていたり、
僕の知っている世界ではなかなか想像しがたい環境のなか、貧しさや苦しさのなかでの夢や充実した日々を見いだした子供たちの生活をユーモア含めて表現された、そんな小説です。
インドネシア在住の都合もあり、知り合いに紹介してもらい手にとった一冊でした。
しかしながら、この本の表紙にも掲げられているこの言葉。
~~~
貧しかった。
でも、夢があった。
苦しかった。
でも、充実していた。
~~~
という言葉に想起される情景に、感じるものがありました。
冒頭に紹介した言葉
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最大限受け取る人ではなく、最大限与える人になりなさい
~~~
これは、そんな貧しい学校の校長の言葉です。
自分が満たされていない環境で、
人に何かを与えることができるっていうのは、
なかなかできるものではないなと。私はそう思います。
例えば、、
私がよく聞く話で、人に水を分けてあげるとしたら、
まずは自分のコップを満たしなさい。それから、初めて身の回りの人の事を考えることができるようになります。
といったことを聞きます。
でもこの小説を通して感じたのは、自分のコップを満たさずとも与えることができる、そして、
そうした行いは、様々な結果として思っていなかった(想像もできない)中身になって、自分のコップを満たしてくれるということでした。
そして、そもそも人に与えることができるのは、お金や水のように他人に与えた場合に自分の取り分が減るようなものばかりではなく、知識や経験、心のあたたかさ、優しさ、など。
与えたとしても自分の取り分が減らないものがたくさんあるということ。
むしろこの世の中はそういったもので溢れていることに気付かされました。
だから、僕にももっともっとたくさん与えられるものがあるなと気づかされた一冊です。
“虹の少年たち” 概要
あらすじ
小さな島に、生徒が10人そろわなければ廃校といわれた学校があった。
やっと集まった貧しい子どもたちは、誰もが個性的で魅力に溢れていた。
若い新人女性教師ムスリマ先生のもと、子どもたちは眠っていた自分の力を次第に開花させていく。
そして、今まで決して勝てなかった裕福な名門校との決戦の日がやってきた……。
ハルファン校長は言った――「最大限受け取る人ではなく、最大限与える人になりなさい」と。
著者について
著者: アンドレア・ヒラタ(Andrea Hirata)
インドネシア・バンカ・ブリトゥン州生まれ。インドネシア大学経済学部を卒業後、イギリスのシェフィールド・ハラム大学にて経済学を専攻し修士号を取得。その後インドネシアに戻り、電気通信会社テレコムセルに勤務。2005年に本作にて小説家としてデビュー。著書に本作のほか『SangPemimpi(夢追いかけて)』『Edensor(エデンサー)』『Maryamah Karpov(マルヤマー・カルポフ)』(以上、ラスカル・プランギ四部作)、『Padang Bulan(パダン・ブラン)』『Cinta di dalam Gelas(コップの中の愛)』の二部作(すべて、Bentang Pustaka 社刊行)があり、これらはすべて英語に翻訳されている。デビュー作である本作『虹の少年たち―ラスカル・プランギ』は国内販売数が500万部に達し、国外でも19か国語に翻訳されている。
訳者について
加藤ひろあき(かとう・ひろあき)
1983年、東京都生まれ。東京外国語大学卒業後、同大学院にて修士号を取得。2006年から1年間、インドネシアはジョグジャカルタにあるガジャマダ大学へ留学。その際、ジャワ島大地震で被災するも傷一つなく助かり、救援物資と音楽を届けるというボランティアに従事。現在は上智大学にてインドネシア語を教えながら翻訳、通訳、さらには歌手、俳優としても活躍の場を広げている。
福武慎太郎(ふくたけ・しんたろう)
1972年、岡山県生まれ。現、上智大学外国語学部アジア文化研究室准教授。専門は東南アジア地域研究(主にインドネシア、東ティモール)、文化人類学。
読者の声
サンマーク出版の「レインボープロジェクト」で邦訳された書籍です。全国の書店員さんに気に入ってもらわなければ発刊することができなかったと聞きましたが、この物語は本当に感動を呼ぶと思います!
どんなに貧しくても、学ぶことこそが未来をつくると思いますし、先に生まれたものは、必ず後に続く子どもたちに未来を授けなければならないということをこの本を通じて感じることができると思います。
たくさんの方に読んでいただきたい本です!
インドネシア語で読みましたが
日本語版がやっと出て嬉しい。
原本は虹の兵士というタイトルなんですが
加藤さんの虹の少年たちのほうがより
いいと思います。
訳者によってせっかくの本が
台無しになるケースが多いですが
今回は全くダメになってません
本を手に取ってみたものの、
久しく読書から遠ざかっていたので、ちゃんと最後まで読めるかなあと思いつつ読み始めました。
表紙や帯を見て、なんか面白そう!って思って、張り切って表紙を開いた初日…
最初の率直な感想は…
登場人物の多さ・名前や固有名詞の覚えにくさ等により、2〜3章ほどでいったん頓挫。。。
その後、こつこつ読み進めるも、気付けばひと月経過してて、
あーこりゃ気合入れなきゃ!と、再開したんですけど、
なんだかそのあたりから一気に面白くなってきて、最後は一息に読みました。
こつこつと細やかなエピソードを積み重ねて、最後にぎゅーっと集約されていく感じがすごくよくて、
いい体験させてもらったな〜!という感じ。
新邦訳版 虹の少年たち オリジナル・ストーリー (インドネシア現代文学選集 3) 単行本(ソフトカバー) – 2022/12/18
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